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最高裁判所第二小法廷 昭和36年(オ)208号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人安田覚治の上告理由第一点について。

所論弁論の全趣旨から被上告人の本件係争地の時効取得の主張のうちにはその地上の杉立木のみについての時効取得の主張も含まれているものと認められる旨の原審の判断は、記録に徴し、当裁判所もこれを是認する。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論の点に関して、原判決は、他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けた者が、右植付の時から所有の意思をもつて平穏かつ公然と右立木を二〇年間占有したときは、植付の時に遡つてその立木の所有権を時効により取得するものであり、その法理は、一筆の土地の平面的一部分について時効取得の要件を充足した場合、当該一部分が時効により取得されることと別異に取り扱われなければならないような合理的根拠がないこと、また、上告人は訴外斉藤政雄より本件係争地を地上の杉立木を除外して買い受けたのであるから、上告人は右杉立木に関するかぎり未だ取引関係に入つたことがないものであつて、被上告人に対して右杉立木の所有権取得につき有効な公示方法を欠いていることを主張する正当な利益を有する第三者にあたらないことを説示しているのであり、右原審の判断は相当として是認すべきである。されば、原判決には所論違法はなく、論旨は採用できない。

同第三点について。

所論福島地方裁判所郡山支部昭和三二年(ヨ)第四五号仮処分命令申請事件における目的山林の杉立木が本件係争地の杉立木にあたることは、当事者の主張ならびに記録に徴し明白であるから、原判決には所論理由不備の点はなく、論旨は採用しえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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